使えないオッサンになる現象
若い時は、誰もが「あんなオッサンにはなりたくないなぁ〜」とか「あんな上司にはなりたくないなぁ〜」と思いながら、いつのまにか自分が年をとった時には、そうなっている可能性があります。それは何故かと言えば、リーダー的なポジションになるほど、専門的な仕事が少なくなり、調整だったり、雑用的な仕事が増えてくるからです。それもそのはずで、リーダーの仕事とは個人の力を発揮ことが目的ではなく、チームとしての力を発揮することが目的だからです。そのため、みんなが気持ちよく仕事をできるようにするために、調整的な業務が増えてきます。それは大事な仕事であることは疑いようのない事実です。ただし、これが高い給料を貰う価値があるかどうかは、判断が別れるところです。個人のスキルによるところも大きいと思います。また、このポジションの重要さは、会社の経営状況に左右されます。会社の景気がいい時は、重宝されるかもしれませんが、傾いている時はどうでしょう?調整役より、手を動かせる人の方が重宝される可能性があります。こうして会社が傾いている時に首を切られてしまう人材が「使えないオッサン」と呼ばれることになります。まぁ、上の世代だと年功序列だけで上がってきた「使えないオッサン」がいるかもしれませんが、それは今の若い世代には少ないと思うので割愛します。
実はこれはプログラマーの35歳定年説と中身はほぼ同じです。
エンジニアが30代の半ばに差し掛かったころ、重要なプロジェクトマネージャーを任されるようになります。その時に求められるのは、個人としての力ではなく、チームとしての力です。そのため、様々な調整に時間を割くようになります。また、「プログラマーとしてではなく、人財として会社にコミットして欲しい」と言われて出世する人もいると思います。それはそれで、素晴らしいことかもしれません。正直、これがいいことなのかどうかは、自分には判断がつきません。出世することは事実です。いずれにせよ、こういった事情でプログラマーとしては35歳ぐらいで定年を迎える人が多くいます。
そして、こういった話はエンジニア派遣とも少し関連があります。
物を作る仕事というのは、1つの会社の中で継続して起こるものではありません。Webサイトを作って、ある程度、完成したらエンジニアの仕事は減少します。これはマンションの建築などを想像してもらえればいいと思います。最初にマンションを作って、完成すれば、あとは数年に一回の保守だけが残ります。プログラミングもこれと同様です。最初にシステムを構築して、完成すれば、あとは基本的には保守になります。保守の時期には追加開発などもあるかもしれませんが、基本的には、エンジニアリング的な仕事が減ったり、無くなったりしていきます。これが上記で書いた「プログラマーの35歳定年説」に拍車を駆けます。本人は楽で嬉しいと思っているかもしれませんが、将来的にはその人はどうなるかわかりません。ちなみに、エンジニア業界では特定派遣と呼ばれる業種があり、彼らは派遣会社に正社員として勤めながら、忙しい状態にある会社だけを転々とします。システムの開発が終わるまではA社にいて、そこが終われば次はB社に行くみたいな感じです。これはこれで理に叶ったシステムで、エンジニアにとっては常に成長できる機会が与えられるので良いところもあると思いますが、中間搾取率は問題視されるべきです。これをやるなら、フリーランスになる方がいいでしょう。
上記の事実を踏まえて、どうすれば使えないオッサンにならないですむのか?(会社側からすれば、どうすれば使えないオッサンを生産しなくてすむのか?)
この議題は、個人だけではなく、多くの会社で論じられています。使えないオッサンになることは個人にとって問題なことは当然ですが、会社にとってもマイナスだからです。そのため、会社でも現場にいながら専門性を高めていくような職種が作られ始めています。Web系ではありませんが、島津製作所では田中さんがノーベル賞を受賞されてから、研究に専念できるフェロー職を作ったそうです。田中さんは現場で頑張り続けた方で、受賞されるまでは主任でした。もし管理職になって現場から離れて出世する道を選んでいたら、ノーベル賞は貰えていなかったかもしれません。また、ある会社では専門職、マネージャー職の2つを作って、どちらの道に行きたいのか社員に選ばせるようにしています。こういった取り組みで、少なからず、人財の「使えないオッサン化」が防げるかもしれません。それでも社会的に、こういった流れが普及するにはまだまだ時間がかかそうです。では、組織としてではなく、個人としてはどうれば防げるのでしょうか。言葉としては単純ですが、「現場で開発することに拘り続けること」、「社内で開発の仕事が無くなったら転職すること」の2つになると思います。そのためには、様々な誘惑もありますが、それらを断ち切って多少はワガママになってでも初志貫徹するしかなさそうです。使えないオッサンになってしまった人を、社会は決して救ってはくれません。少し話はズレますが、エンジニアから離れて会社に貢献して、そのリターンが得られるならば、使えないオッサンになるリスクを背負う価値はありそうです。つまり、ストックオプションを貰うことです。でも、それが無い限りはエンジニアから離れることは、ただのリスクでしかなく、危険なのではないでしょうか?
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